老婆のような少女
先日、自宅前でバイクを暖機運転させながら、一服していたときの話。
通りかかった小柄な老婆が足を止め、何か言いたげに、私とバイクに、交互に目をやっている。私が微笑むと、老婆は、つと近づいて、「大きなオートバイねぇ」とため息まじりに呟いた。その声の響きの中に、「私、オートバイ大好きなのよ」老婆がそう言っているのが、はっきりと聞こえた。
案の定、老婆は父親がバイク乗りだったようで、少女時代のバイクにまつわる話をいろいろ聞かせてくれた。ハーレー、陸王、サイドカー......亡くなるときお父様はアクセルを回すような仕草をされたとのこと。
聞かせて頂いた幾つかのエピソードの中で、その情景が、映画のワンシーンのように浮かんだものを、一つ紹介しよう。
彼女のお父様が134号線を「陸王」で走っていたとき、白バイに停車を求められた。バイクを降りた警官は、その巨大なバイクを熱い目でじっと見つめ、乗ってみていいかとお願いしたそうな。お父様が快諾すると、警官は勢いよく陸王に跨がり、海岸線をすっ飛ばした。そして、戻ってきた警官は嬉しそうにこう言ったそうだ。130キロ出た、と。
今、同じことをすれば袋叩きになる話が、なぜこうも美しいエピソードとして胸に響くのか。私のふかすタバコの煙などまるで気にしない老婆を見つめながら、私は久しく感じることのなかった「居心地の良さ」のようなものを感じていた。
別れ際、老婆は尋ねるでもなく、しかし、どこか甘える少女のような口調で呟いた。
「どこかで陸王、見られないかしら」
見られるかな。
ちょっと探してみるよ、おばあちゃん
下の写真は、一昨日、久々に縄文土器を掘っていて出土した磨製石器。持ち手のフィット感が感動的。男根の形に見えないこともなく、もしかすると呪術的な目的で用いられていたものかもしれない。こいつを文鎮にして書でもやろうか。
通りかかった小柄な老婆が足を止め、何か言いたげに、私とバイクに、交互に目をやっている。私が微笑むと、老婆は、つと近づいて、「大きなオートバイねぇ」とため息まじりに呟いた。その声の響きの中に、「私、オートバイ大好きなのよ」老婆がそう言っているのが、はっきりと聞こえた。
案の定、老婆は父親がバイク乗りだったようで、少女時代のバイクにまつわる話をいろいろ聞かせてくれた。ハーレー、陸王、サイドカー......亡くなるときお父様はアクセルを回すような仕草をされたとのこと。
聞かせて頂いた幾つかのエピソードの中で、その情景が、映画のワンシーンのように浮かんだものを、一つ紹介しよう。
彼女のお父様が134号線を「陸王」で走っていたとき、白バイに停車を求められた。バイクを降りた警官は、その巨大なバイクを熱い目でじっと見つめ、乗ってみていいかとお願いしたそうな。お父様が快諾すると、警官は勢いよく陸王に跨がり、海岸線をすっ飛ばした。そして、戻ってきた警官は嬉しそうにこう言ったそうだ。130キロ出た、と。
今、同じことをすれば袋叩きになる話が、なぜこうも美しいエピソードとして胸に響くのか。私のふかすタバコの煙などまるで気にしない老婆を見つめながら、私は久しく感じることのなかった「居心地の良さ」のようなものを感じていた。
別れ際、老婆は尋ねるでもなく、しかし、どこか甘える少女のような口調で呟いた。
「どこかで陸王、見られないかしら」
見られるかな。
ちょっと探してみるよ、おばあちゃん
下の写真は、一昨日、久々に縄文土器を掘っていて出土した磨製石器。持ち手のフィット感が感動的。男根の形に見えないこともなく、もしかすると呪術的な目的で用いられていたものかもしれない。こいつを文鎮にして書でもやろうか。