一条家サロン

アトリエ・センターフォワード第二回公演
「一条家サロン」(作・演出 矢内文章)を見た。

チェーホフの「三人姉妹」「桜の園」を下敷きとして、
昭和十年末の日本のブルジョワ家庭を舞台に、
その崩壊と再生を描いた作品。


早めに劇場(シアター風姿花伝)についてしまい、
あの辺は何もない所なので、
仕方なく向かいの沖縄料理屋で
ソーキソバを食って時間をつぶし、
開場10分後には劇場へ。
しばらく隣の美容院の猫(店中猫だらけ)
を見てから入場し、
いつものように前の方の席を陣取った。

しばらくぼんやりして、
以前この劇場で何か観たなあ、
何だっけなあ、
あれは昭和30年代の話だったなあ、
などと追憶の人になっていると
突然、誰かに肩を叩かれた。

振り返ると、
案内のお兄さんが少し怪しむような顔つきで、
「あの、チケットを拝見してもよろしいでしょうか……」
と、声をかけてきた。

えっ、俺、ちゃんと金を払ったけど……。

あ、お客さん、あの、やっぱり席違います。

え、何? これ指定席なの?

案内のお兄さんの背後には
目を血走らせて俺のことを睨んでいる男がいた
ああ、あんたの席だったんだ、すまんね。

思い出した
前回の公演も指定席で、
俺は席を変えてくれとお願いして
却下されたんだっけ

小劇場の指定席はちょっとさびしいんだよな
ほんと小さな劇場なんだからさ、
早く来た人に席を選ぶ権利をおくれよ
センターフォワード!

ということで、一番後ろの席に追いやられて
芝居を観ることになった。

あーあ、前で観たかったなあ……。
と、気分が沈む中舞台は始まった……。

普通なら、もうこの時点で戦意喪失なんだけど、
今回の芝居は凄い。
面白かった! 

こんなにいいと思ったのは久しぶり。
俺は好きだなあ。
あんな会話はなかなか書けない。
人物の陰影が濃いんだな。
いや、素晴らしかった。
特に、中盤から最後にかけて。
ラストは鳥肌。

俳優も良かった。

次女役の立原さんは毅然とした中に
艶のある女っぽさが匂い立っていて、
目が離せない。

金貸し役の五十嵐さんは
愛すべき相手が
同時に憎むべき相手でもあるという
難しい役どころを実に豊かに演じていた。
孤独。さびしさ。やりきれなさ。
いや、魅力的な俳優だ。

桂を演じた井上さんは
拝見するたびに存在感が大きくなっている
この桂という男で、芝居全体が決まる気がした
地味な役だけれど、玄人が好む役
作家の秘めた思いが込められた役
結局俳優の力は、
人を見つめる、その目に、全てが表れる
そういうものだ

そして眞藤さんは動物的なしなやかさが素晴らしい
この芝居、一番の毒だ。猛毒だ。
女中に向かって「俺はそうやって生きてきたんだよ」
とすごむ場面では、
その毒の哀しみが垣間見えた。
自分自身の毒で傷つく男の哀しみが

そのほかにもちょっと紹介はできませんが
素敵な俳優がたくさん出演している。
恐るべしセンターフォワード!

29日までやっています。
お勧めですよ。

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