演出の大江


先日、ヤコブの演出をする大江と
渋谷で舞台の打ち合わせをした。

打ち合わせといっても、
まあ、昼間から飲みながら、
そのついでに舞台の話をした、
と言った方がいいかもしれない。


大江とは20年前に、
ある演技学校で知り合った。
大学に行かないで
芝居ばかりやっていた頃の話だ。

俺たちはその演技学校で
一番若い二人だった。
そして、
大江はプロデューサーやら
演出家やらに目をつけられる最有望株で、
俺は誰にも相手にされない、
怒れる若者だった。

ただ、それでも不思議と馬が合った。
大江のように芝居が好きな人間はいなかったし、
芝居を知らない人間もいなかった。
俺たちはまだ何も知らなかった。
それでお互いに正直に話せたのだと思う。

春になると、
用賀のあいつのアパートの窓からは
バンダの桜が
手が触れそうなところまで
枝を伸ばしていた。

桜の花びらが部屋の中に落ちてくる様子は、
安っぽい舞台セットのようで、
話す言葉も、
下手な俳優のセリフ回しのようになった。

それから、
それぞれ、お互いの道を歩み、
今回、初めて一緒に舞台をつくる。

ちょっと嬉しいような、
ちょっと不安なような、
そんな気分だ。

打ち合わせで、
俺のブログ見たか? と聞いたら、
あんな長いの読んでられっかよ
と言われた。



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