二瓶さんと戌井さん


昨夜、下北沢の本多劇場で、
「続々オールド・バンチ~カルメン戦場に帰る~」を見た。
ツツガムシ次回作「ヤコブ・クラヴィエツキ」に出演していただく
二瓶鮫一さんが出演しているのだ。

この作品の第一の魅力は、
二瓶さんをはじめ出演者の方々の人生が、
じわっと
これは本当に、焼酎のお湯割りに
梅干しを放り込んだような、
じわっと
にじみ出たエキス
その香りと味わいに尽きるのではないか。

文士劇とか、そういう趣向のあれなのかなあ
などと高をくくって見に行ったので、
これはうれしい誤算だった。

そして、とにかく二瓶さん!
ひと時も目が離せなかった。
素晴らしい俳優だということを改めて
痛感させられた。

終演後、楽屋に挨拶に伺った。
直接ご挨拶をするのはこれが初めて。

楽屋から出てきた二瓶さん、
印象というのか、
雰囲気というのか、
とても柔らかくて、
何というか、
大きな菩提樹を目の前にしているような
まあ、そういうものを前にしたときに抱くような
恭順の気持ちになった。
一瞬でなった。

二言三言言葉を交わし、
そして最後に、
四月を
とても楽しみにしています
そう言っていただいた。
感謝。

そしてこの芝居でもう一人、
戌井一郎さんも俺にとっては忘れられない人。

文学座の養成所時代、
卒業公演の「女の一生」の演技指導をしていただいたのが
戌井さんだった。
俺は「一幕エイジ」という役をやったのだが、
そのときとても勇気づけられる言葉をかけていただいた。

卒業生はたくさんいるので、
きっと俺のことは覚えていないだろうし、
覚えていてほしいなんて少しも思っていない。
ただ、楽屋を訪ねたとき、一瞬だけ
戌井さんに言葉をかける
チャンスがあった。

「戌井さん」
のどまで出かかった言葉は
結局、飲み込んだ。
黙っていたほうが
いいような気がしたのだ。

いや、黙っていたいような
気がしたのかもしれない。


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